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トリスを飲んでハワイに行こう!

急に思い立って小旅行に出ることにした。
乗車までには少し時間もあるので旅先でのナイトキャップを求めてコンビニに立ち寄った。
缶ビールではありきたりで旅の情緒を深めるという意味では物足りない、かといってホテルに宿泊予定だから日本酒や焼酎というのもミスマッチングのような気もする。
しようがないからワインでも買おうか?と手を伸ばしかけたところ隣にトリスがあるのを見つけて思わず叫んだ。『そうだ!(トリスを飲んでハワイに行こう!)』

いまや知らない方が殆どだろうが1960年代に一世を風靡した伝説の広告マン・山口瞳のキャッチである。(ちなみにキャッチコピーやコピーライターという英語はない。)
後で知ったことだがトリスについてくる抽選券で応募すればハワイ旅行が当たる!という当時としては画期的なキャンペーンだった。でも当時は海外旅行は自由化されておらず抽選にあたれば旅行するための資金を積立ててくれて海外旅行が自由になった暁にはハワイにご招待する、というなんとも長閑というかのんびりした時代だった。

その頃大阪の街中には至るところにトリスバーなる小さなスタンドバーがあり、アロハシャツを着たアンクル・トリスというキャラクターが店の窓や入り口に貼り付けられていた。
当時小学生の私はそこが何をするところかも良く分からずに横眼で見ながら通学していたのだが、この宣伝文句のおかげでここでトリスを飲むとハワイに行けるのか、と納得したのは幼いがゆえに物事の辻褄が合わないことを気にすることもなかった無邪気さに他ならない。

話しを戻そう。
正直なところトリスなんて私の父親世代が愛飲した高度成長期の、それも庶民の国産ウィスキーで味がどんなものかもわからない。
ポケット瓶が¥298なんて言われると高級な缶ビール1本と同じくらいの値段である、ということはそんなに期待してはいけないのかな?という不安もよぎるが、逆に美味しくないからと残りを捨てたとしても後悔しないくらいの値段でもある。
取り敢えずいくつかのおつまみと共に1本購入してホテルに向かった。

 

宿泊した志摩観光ホテルのゲストラウンジは素晴らしく立派なオドーブル(英語の発音からすればこの書き方の方が近い)も用意されていた。
眼前に見える目の覚めるようなイタリアンブルーの伊勢湾とそれよりわずかに薄い青空のコントラストは素晴らしく湾内には、いたるところに真珠貝の養殖場が見受けられた。それは今にも海女さんが海面から顔をだし笑顔で伊勢海老を高々と掲げて私の元に届けてくれるんじゃないか?と錯覚するほど見事だった。

そんな贅沢なセッティングの中でウィルキンソンソーダで割ったハイボールをいただいた。
。。。味に癖がなく素直でスムーズで実に良い感じだ!
どうも生まれついての感激性に加えて旅先ということでの気分の高揚感から、オマケポイントがついていると思うのだが、それにしても私の口にピタリと馴染んでくる。
ひとつ付け加えるなら昔から私は何事においても安物が一番自分の口に合うような気がしてならない。

ポケット瓶の良いところは決して呑み過ぎないところでもある。
香水の香りに惹き付けられるのがすれ違った瞬間にあるように、又男女の恋愛の初期の衝動にも似たような瞬間があるように、酒を本当に味わうのは呑み始めた刹那にあると思う。
何事も、それを超えてしまったらただ酔いが増すだけで全てが麻痺してしまうに違いない。

ちょうどこの瓶が空になる頃には気持ちも和み、体も息を吐ききったようにだらしな~い状態となっていた。
やっぱりトリスを飲んだらハワイに行かなくては!
トリス1本でそんな風に上機嫌になれた小旅行だった。

おしまい。

By Yuji