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楊貴妃

  • FUNAI'S EYE

恐ろしく不機嫌なウエイトレスがいる。
勿論器量は良くない。
その上サービスはなってない。
でも料理は旨い。(最近はシェフが変ってちょっと落ちた。)
大阪にある中華料理店だが、私は独りで中華が食べたくなった時はこの店に来る。
包子でビールを飲んだ後は五目あんかけオコゲ炒飯で〆ることにしている。
この味に惚れ込んで時折無性に食べたくなってやってくるのだが、相変わらず彼女のご機嫌は悪い。
そんな彼女の不機嫌さを無視してひたすら笑顔で接することに心がけている。
時には言葉が返ってくることもないのに他愛もないことを話しかけたりもするが、勿論大した反応はない。
北京原人だって、もう少しましな表情をしていたと思う。
ところがある日このウエイトレスが私に微笑んだ。。。
そこで原因を考えてみた。

① 何かその朝に良いことがあってそれを思いだした。
② 私の顔に何か付いていて面白かった。
③ 私に好意を持ち始めた。(それはない。)
④ 彼が出来た。(もっとない、と思う。)
⑤ 単に自分の不愛想を反省し愛想良くお客様に接しようと試みた。(ん~。これであれば良いけれど他の客には相変わらず不愛想だった。)

その後、何回か通ったある日ふとしたことで私が彼女の笑顔を褒めた途端、その北京原人じゃなくって彼女が喋り始めた。曰く
自分はあまり人と接するのが好きではなく、特に命令口調で大声を出して話す酔っ払ったお客さんが怖くて実はビクビクしていたんですが、お客さん(私のこと)はいつも笑顔で丁寧な口調で接して下さってありがとうございました。
この店を離れますので最後にご挨拶したかっただけです、、、

その途端、私の目から鯨の鱗なみの大きな幕がバサッと音を立てて落ちていった。
それはまた北京原人が楊貴妃に姿を変えた瞬間でもあった。

客だからといっていつでも最高のサービスを与えられて当然!ではない。
サービスを提供する側も一生懸命やっているが、より良い客にはより良いサービスを与えたくなるのが人情である。
つまりサービスは客の方が勝ちとるものであって決して仏頂面をしていて与えられるものではない。
自分がその店の最高のサービスを得たいと思うなら自分がその店にとって最高の客であるのか?を見つめなおす必要がある。

結局は私の推察は上記の③と⑤をちょっと進路変更した中間点くらいにあったかな?
彼女の未来に幸あれと心の中でつぶやきながらフラフラと店を出た。

おしまい。

By Yuji
PS: それにしてもこの年にして良く食べるよね。