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年の瀬に

  • FUNAI'S EYE

僕がホテルの正面玄関でなく近道の裏口から入ろうとした時、待ち構えていたように中年女性が僕に近づいてきた。彼女の服装からそのホテルの宿泊客でも従業員でもないことはすぐに分かったけれど驚いたとか怖いというより何となく以前から分かっていたような気持ちになった。

それは数年前、未だ僕が大阪のアパートでなくホテル住まいをしていた頃のことで街にはクリスマスソングが流れイルミネーションが綺麗で、ちょっと華やかな中にもしんみりするロマンチックな時節、つまり今頃のことと思って頂ければよい。

彼女は、
「お財布を落としてしまって困っていて、家に帰る電車賃がないのですが、¥500で結構なので貸して頂けませんでしょうか?」って声をかけられた。
夜の帳の中、薄暗くて彼女の顔も良く見えなかったけれど、アメリカだったらカツアゲに会ってもおかしくない状況で、周りを見回しても僕しかいないし、彼女が僕にお願いしていることは明らかだったし、とっさのことで(¥500貸して下さい!)って言われてもいつ返してもらえるか全くアテにならないし、でもどう見てもその切羽詰まった顔つきから¥500が今夜必要だってことも良くわかったし、ということで混乱した自分の頭の中を整理しながら
「あーお困りでしょ。いいですよ」って¥1,000札を渡した。
彼女が¥500のおつりを持っていたのかどうか分からないけれど、彼女は遠慮がちにそのお札を受け取り「助かります。本当にありがとうございました。」ってとっても丁寧にお礼を言って何度も何度もお辞儀しながら立ち去って行った。

ひょっとしたら本当にJRか京阪電車に乗ってお家に帰ったのかもしれない。
そうでなくて何か温かいものでも食べて次の日のことを考えたのかもしれない。
僕はホテルの部屋に戻ってから、もし本当に電車賃以上に困っていたのなら¥3,000くらい渡せばよかったのかな?それで
「吉野家の牛丼特盛かその角にあるMacでダブルチーズバーガーなんかでお腹いっぱいにして、元気だしてから電車に乗って帰ってください。」なんて励ましてあげればよかったのかな?と思ったりもした。
どうも良いことは後で徐々に思いつくようで時間がかかるわけです。
今更追いかけてもどこに行ったかも分からないし、こちらも途方にくれたような気分になってしまったのでした。

毎年年の瀬になると、あんな寒空の中で誰に声をかけていいものかもわからず絶望的な(多分)気持ちで佇んでいたあの女性が¥1000持ってどのようにして1夜を過ごしたんだろう?と思うとちょっと胸が痛くなるわけです。

何が言いたいかというと、他人の心の痛みを全て取り除いてあげることはできなくても、真面目に向き合ってあげることくらいはできるわけで、その時の彼女の人生を変えるほどのことはできなかったけれど、あの¥1,000でなんとなく彼女の体と心が温かくなってひとときでもあの人に声をかけてよかった、なんて思ってもらっていればいいなぁ、なんて思うのです。
本当は¥1,000でも惜しかったんだけど。

今年も無事に社員、家族全員が元気で一年を終えることができたことに感謝しつつ。
(又、あの女性にも平和な生活が訪れていますように。)

By Yuji