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ISAKOS ~ベルサイユのばら~

  • FUNAI'S EYE

バルコニーには王妃マリー・アントワネットが不安気な面持ちで佇んでいる。
それもそのはず前庭には身分としては明らかに平民とも呼べない
下流の貧困層から湧いてきたような市井の民に占領されていたからだ。
私は226年前に遡りその群集の中に紛れて城と王妃を眺めていた。
彼等は行列しながら宮殿を占領しているが武器を持って戦うわけでもなく、
破壊行為をするのでもない。
ただ大声をあげパンを求めることしかできない群集であった。
しかし彼等は怒っているのではない。
驚いていたのとも少し違うようだ。
ルイ16世の暮らしのほんの一部を見ただけで
彼等は私と同様にその贅沢さに明らかに怯えていたのだ。
こんな贅沢を神が許すわけがないのだと。
群集と同じ目線に立った今、私は感嘆や感動というものでなく明らかに畏怖を感じていた。
『あぁ、神よ、堪忍して。』(どうしても関西弁になってしまう。)

貴族の嗜好というのはブルジョワのそれとは、明らかに異なる。
単なる金持ちならば、見せびらかすことが一番となり、
どこかに必ずや、卑しいものが燻っており見苦しさが鼻につくものだ。
その違いこそが「品位」・「育ち」というものであろう。
ここにはそのような見苦しさは一切立ち入っていない。
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王妃は後日ギロチンで処刑される。
後ろに束ねられていた長い艶やかな金髪はギロチンの刃の邪魔になり
首を落とせないという理由で無残にも丸刈りにされていた。
日本の武士による切腹、介錯が野蛮行為とされていたが、
同じ頃フランスでも惨い手段で多くの人が処刑されていたのだ。

観光として美しい城を見て優雅な気分に浸るどころではなかった。
何か恐ろしいものに遭遇し
見てはいけないものを見てしまったという気がしてならなかった。

初夏の陽は高く清々しく輝いていた。
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鳥の声しか聞こえぬ城を後にしようとした時、誰かに呼び止められたような気がした。
振り返ればそこにはバラだけがあった。
いや、それはもしかしてマリー・アントワネットだったのかもしれない。
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ISKOS出席の為32年ぶりにフランスを訪れたのだが
私はISAKOSを見学せずして何しに行ったのやろ?

By Yuji